栃木県警察本部生活環境課と小山警察署は、平成25年4月30日、ファイル共有ソフトを使い、パソコンゲームなどを違法配信していた埼玉県在住の無職A(男性・40歳)を、著作権法違反(公衆送信権の侵害)疑いで逮捕しました。無職Aは逮捕事実を認めています。
この無職Aは、平成25年1月中旬から下旬までの間に、ファイル共有ソフト「Share」を使い、当機構加盟会社のゲーム作品を含む多数の商品を、著作権者の許可を得ずに無断でアップロードし、不特定多数のインターネットの利用者に対して自動送信できるようにしていました。家宅捜索の際に、Shareを使用していたパソコンなどが多数押収されており、栃木県警では、他の余罪も含め詳しく調べています。
栃木県警サイバー犯罪対策室のサイバーパトロールにより、無職AによるShare上の違法アップロードが発見され、当機構へ照会の問い合わせがあったことが、端緒となりました。当機構調査部では、栃木県警からの要請により、アップロードファイルについての真贋鑑定、情報提供、告訴資料の作成など行い、全面的な捜査協力をしました。
■告訴会社 株式会社ホークアイ、株式会社ウィルプラス 他2社
■鑑定実施者 一般社団法人コンピュータソフトウェア倫理機構 事務局調査部
_/_/_/_/_/ 【調査部トピック】『“喫茶東洋”〜神と呼ばれし者の虚栄心〜』 _/_/_/_/_/
この被疑者は平成21年ごろから約4年間にわたり、「喫茶東洋」というIDで、多数の新作ゲームソフトを発売日直後にアップロードしていました。新作商品の内容がインターネット上に流出することは、アニメやゲームを制作をしている会社にとって、大きな痛手であり、被害も甚大になっています。告訴会社(加盟会社)のゲームソフト以外にも、数多のゲームソフトが被害を受けました。
さて、この被疑者は、どんな心情で違法配信を続けていたのでしょう? 社会的にも、著作権侵害が問題視されているなかで、ファイル共有ソフト上の見えない相手に対して、違法なアップロードを続けていました。
インターネット上では、被疑者を「神」「東洋神」「放流者のチームリーダー」などと呼ばれていました。被疑者は、違法配信による結果や反響に、現実の社会生活では得られない、デジタルな世界の中でのみ得られる「虚栄心」を満たしていたのかも知れません。被害状況や長期的な違法行為の繰り返しから、重い刑罰も避けられないと推測されます。バーチャルな感覚に溺れた代償としては、余りにも大きいのではないでしょうか?
皆様もご存知かとは思いますが、ファイル共有ソフトについては、使用者の匿名性が保たれているわけではありません。捜査機関による解析技術も進化しており、警察庁では平成22年1月から「P2P観測システム」の運用を開始、全国の警察本部と連携し監視活動が進められています。ファイル共有ソフトを使い違法行為をしても、決して「わからないであろう」や「バレないだろう」では、済まされないのです。
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